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事務所内廊下

 

海外の会社の権利能力

弁護士 永 島 賢 也
2008/9/12

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海外の会社の問題

海外の会社は、当然に、我が国において、国内の会社と同じように、訴えたり、訴えられたり、あるいは、仮差し押さえをかけたり、仮処分のかけたりすることができるのでしょうか。

民法の定め

民法の定めをみてみましょう。


民法は、

「外国法人は、国、国の行政区画及び外国会社を除き、その成立を認許しない。ただし、法律又は条約の規定により認許された外国法人は、この限りでない。」


と定めています(民法35条1項)。

つまり、「認許」が、必要であると定めています。

この規定によって、認許がなされた外国法人は、日本の会社と同じように法律的に振る舞うことができるようになります。

すなわち、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有することができます(同法35条2項)。私法上の権利義務の主体となる資格が認められます。

認許の方法

では、その法人の成立につき、具体的には、どのような「認許」がなされているのでしょうか。

外国法人の認許には、これを個別的に認許する方法や一定の国の法人を概括的に認許する方法などがあるとされています(注釈民法)。

そこで、我が国では、上述のとおり、一定種類の外国法人は、どの国の法人であるかを問わず、概括的に認許することにしています。

たとえば、「国」、「国の行政区画」は、私法上の権利義務の主体として、認許されます。もっとも、国の行政区画については、その所属国の法律上、法人格を認められているものであることが必要とされています。

そして、「外国会社」も、同様に、外国会社であれば、概括的に認許し、権利義務の主体になることができます。

実際、法務省(民事局参事官室)の説明によれば、個別の認許の制度は存在しないとのことです。

外国会社とは

では、外国会社とは、どのような会社でしょうか。

外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの、または会社に類似するものをいいます(会社法2条2号)。
ということは、たとえば、ある会社が、米国の某州の法律に準拠して設立された法人であれば、外国会社に該当し、民法35条1項により、認許された外国法人として、権利義務の主体になることができます。

民事訴訟法24条は、当事者能力等を民法その他の法令に従うと定めていますので、外国会社であれば、原告として、訴えを提起することもできます。すなわち、当事者 として、訴えたり、訴えられたり、仮差し押さえをしたり、仮処分をかけたりすることができます。

証明書

外国の法律に基づいて設立された法人であることを証明する書面は、多様であって、我が国の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書・資格証明書)のような制度があるとは限りません。


たとえば、デラウェア州では、

I, *****, secretary of state of the state of Delaware, do hereby certify "ABCDEFG, Inc." is duly incorporated under the laws of the state of Deraware and is in good standing and has a legal corporate existence so far as the records of this office show, as of the twenty-seventh day of July, A.D. 2006.

などと記載し、

State of Delaware Annual Franchise Tax Report

と題して、ABCDEFG社の設立及び存在、その他、取締役等の情報を証明しています。


たとえば、ハワイ州では、

Department of Commerce and Consumer Affairs が、

CERTIFICATE OF GOOD STANDINGと題して、

I, the undersigned Director of Commerce and Consumer Affairs of the State of Hawaii, do hereby certify that according to the records of this Department, "ABCDEF" was incorporated under the laws of the State of Hawaii on 27/07/1984; and that it is an existing corparation in good standing, and is duly authorized to transact business.などとして、

ABCDEF社の設立及び存在等を証明していますが、いわば会社の目的(nature of business)や、取締役に関する情報などは、上記証明書とは別のペーパーで証明しています。

* ポイントは、法律に基づいて設立されたことに関する...incorporated under the laws of the...の部分で、また、in good standingの部分も法人の存在の継続性にかかわる記述です。

これらの証明書は、我が国の商業登記簿謄本と比較して、一見、簡易に作成されているように見えますが、外国の法令に準拠して設立された法人であることを証明する書面であることに間違いはありません。
したがって、これらの書面を提出すれば、当該外国法人が、外国会社に該当し、我が国において権利義務の主体になることができることを証明できると考えます。

なお、我が国と米国との友好通商航海条約においては、相手国の会社の法人格を相互に内国において承認し、その訴訟能力を認めるにとどまらず、広汎な事業活動をする ことを認めているとされています(注釈民法)。

他方、認許を受けられず、権利義務の主体になることができないケースでは、たとえば、不動産登記をする場合、権利能力なき社団として、代表者個人の資格で行うことになります (最高裁昭和47年6月2日判決参照)。ですから、ある不動産に仮処分をかけるときも同様になります。

取引の継続

外国会社が、我が国において、取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定める必要があります(会社法817条1項)。取引を継続的してするとは、 その取引が、継続的事業活動の一環としてなされているかどうかで判断されているようです。

そして、日本における代表者のうちの少なくとも一人は、日本に住所がなければなりません。日本国内に取引上の問題などに応ずることができる者がいるようにする趣旨とされています。

外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において、取引を継続してすることができません(会社法818条1項)。
そういう意味で、特に、日本において継続して取引をする予定のない外国会社は、外国会社として登記をする必要まではないといえます。

また、継続して取引をするつもりがなかったため、外国会社としての登記をしていなかった者が、何らかの紛争に巻き込まれてしまったとしても、上述のとおり、権利能力は認められるので、訴訟上の当事者となることはできます。


登記をしていない外国会社が取引をした場合、その取引をした者は、その外国会社と 連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任を負うことになります(同法 818条2項)。

                                     以 上

         

 

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