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サンフランシスコ

クラスアクション

2008/8/12 弁護士 永島賢也
 Kenya Nagashima Attorney at Law

★ 2008/6 米国視察メモから・・・            >> NEXT

今回の米国視察によって、クラスアクションについても、多くの知見に触れることができました。以下に、できるだけ、忠実に再現できればと思います。

クラスアクション(Class Action)

クラスアクションとは、多数当事者訴訟の類型のひとつとされています。実際に、話題にのぼったのは、原告側がクラスアクションを起こした事例です。また、連邦民事訴訟規則23条の(b)の(3)の類型のクラスアクションが、最も一般的とされ、今回のインタビューでも、この類型が主なものでした。

* One or more members of a class of persons similarly situated may sue or be sued on behalf of all members of that class.

* The third - and most common - basis for a class suit is under Federal Rule 23(b)(3) - the situation in which questions of law or fact common to the class predominate over questions affecting only individual members, and, on balance, a class action is superior to other available methods for adjudicating the controvesy.

(Civil Procedure by Richard L. Marcus & Thomas D. Rowe, Jr.)

たとえば、独占禁止法に違反した業者によって、ある商品について、共同で価格がつり上げられてしまい、そのことによって、より高額の商品を購入させられたユーザーが、その分、金銭的損害を被ったとして訴えを提起する場合、あるユーザーが、クラス代表者(class representative)として名乗り出て、自分自身と、他のユーザー (class member・クラスメンバー)のために、原告として訴訟を遂行し、その結果、言い渡された判決や、和解の効力が、すべてのクラスメンバーに及ぶという訴訟類型です。

通常、クラスアクションは、企業に対して起こされるものというイメージがありますが、独占禁止法の適用領域では、企業が、原告となって、クラスアクションを起こすメリットがあります。

クラスアクションは、我が国にはない類型の訴訟です。民事訴訟法には、類似したものとして、選定当事者の制度があります(民訴法30条)。しかし、これは、選定者が、選定される者(選定当事者)を選ぶという点で、クラス代表者が、みずから積極的に名乗り出て、他のクラスメンバーのために、訴訟を遂行するクラスアクションとは異なります。

クラスアクションは、ひとり3ドルの損害でも、司法的救済が得られることが良いところといえます。これにより、小さな悪行を繰り返すことで大きな悪行を達成することを抑止できます。例えば、クレジットカードの決済に関し、顧客が気づかないような少額の手数料を多数の者から引き落としていたケースなどがあり得ます。

 

クラスの承認(認証)

クラスアクション訴訟では、クラスとしての承認(certification)が受けられるかどうかが重要です。この論点が、この訴訟類型における「主戦場」と言っても過言ではありません。クラスとしての承認が得られると、ほとんどの場合、被告側は、和解に持ち込むそうです。

クラスの範囲が画定され(class definition)、画定されたクラスに該当する者は、当然にクラスのメンバー(構成員)となり、クラスアクションの結果に拘束されることになるので、更に、構成員に対し、告知(notice)をして、除外を受ける機会 (opt-out)を与えます。

この告知(notice)の方法として、新聞広告による方法は、めったに認められるものではないそうで、ひとつひとつ、郵便などで送るため、相当に手間や費用がかかる場合があります。

逆に、このような告知を受け取った企業が、クラスからの除外(Opt-out)を求めて、 弁護士に相談することもあります。クラスメンバーから離脱して、独自に、相手方と交渉を開始したいと考える場合があるからです。このように、クラスメンバーは、クラスからの離脱の自由があります。そして、この離脱の手続を行うことも法律事務所の仕事となっているのです。

例えば、パソコン部品のカルテルについて、高額の部品を買わされた企業が、そのパソコン部品メーカーに対し、クラスアクションを起こしたところ、そのメーカーを顧客とする他の企業が、クラスからの除外を求め、独自に、そのメーカーと話し合いによる解決をしようとするケースがあったそうです。つまり、クラスメンバーに含まれている企業が、被告とされたメーカーが得意先であるため、争いたくないと思えば、クラスからの除外を求めて、独自行動がとることができるのです。

 

被告側の争い方

クラスの承認をつぶすための争い方としては、積極的に被告側から原告側にディスカバリ(証拠開示)を求めて有利な証拠を探し出そうとするそうです。原告側が、クラスを構成しているといえるものではなく、ひとりひとりがユニークな存在である、と争うのです。

ある契約条項が入った契約書にサインした者をクラスとしてクラスアクションを提起したところ、被告側が、その契約書には、25種類のパターンがあるとして、ひとつのクラスとは認められないと争い、その主張が認められたケースがあります。

ある工場の排出物に関する訴訟で、周囲に居住する住民をクラスとして提起されたクラスアクションについて、被告側を防御するためには、クラス代表者とクラスメンバーとは、居住期間が異なるとか、排出物の影響と思われる症状が異なるなどと述べて、争うことになります。

クラスアクションが提起されると、原告側が、ディスカバリで、被告側に顧客名簿の開示を求めることがあり、被告側は、これに個人情報が含まれているという理由でプロテクティブオーダーを申し立てるというやりとりになるそうです。

 

クラス側(原告)の弁護士

クラス側としては、クラスが否定されると、訴訟を遂行する意味がなくなるほど、重大な影響を受けます。

もっぱらクラスアクション中心に仕事をしている法律事務所があるそうで、クラス側の訴訟代理人は、訴訟のための経費を自己負担しており、法律事務所の経費負担は重いそうです。推測でも、すぐに、10万〜20万ドル程度はかかってしまうだろうとのことでした。州によっては、弁護士が経費を負担してクラスアクションを提起することを禁止しているそうです。

クラスアクションを提起する側の弁護士は、クラス代表とされる人物が、真にクラスを代表しているか、慎重に見極めているそうです。クラス代表者自身が、自己に不利な証拠を持っている場合があるからです。安易にクラスアクションを提起すると、経費は弁護士の自己負担で行っているので、相当に重い経済的損失を被ることになります。

 

裁判所の関与

クラスアクションの手続には、裁判所が介入し、原告側の代理人の善し悪しを見抜き、場合によって、その弁護士を手続から排除することもあるそうです。

クラスアクションでは、クラスの認証が認められると、被告側は、和解交渉を開始するのが普通のやり方で、これには、裁判所が積極的に介入し、原告と被告の利害が適切に護られているかチェックし、場合によって、裁判所が、和解案を拒否することもあるそうです。金額についてはもちろん、クラスメンバーへの和解案の通知が適切になされているか、弁護士がそれまでにかかった経費を早く回収ししようとしてクラスにとって不利な内容の和解をしていないかなどがチェックされるそうです。

被告側としては、そのクラスアクションで、仮に、和解をしたとすれば、同様の紛争を蒸し返されるおそれがないものかどうかを確認する作業が必要になります。

 

司法長官の関与

クラスアクションには、司法長官(Attorney General) がかかわってくることがあります。連邦地裁に係属している事件については、裁判所にこの司法長官に対する通知義務があるそうです。南部の洲では、たばこ会社に対する司法長官がかかわる父権訴訟が増加する傾向にあるそうです。

ビタミン剤の価格を拘束するカルテル事件において、高額のビタミン剤を購入させられた販売会社や食品メーカーがクラスアクションを提起していたところ、これとは、 別に、司法長官が、高額な価格が転嫁された商品を購入させられた消費者のため、Parens Patriae(発音は難しいですが、パレンツ・パトリエ、あるいは、パレンス・パトリー)訴訟を提起した例があります。Parens Patriaeは、父権訴訟と訳されることがありますが、あまり良い翻訳ではないという意見もあります。

 

Parens Patriae

Parens Patriaeについては、また、別稿で触れることとします。

> Parens Patriae

 

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